ザ・ハウンド(The Hound[3])は、セイラムによって創られた、周囲の環境に適応できる高度な知能を持つグリムである。“Divide”で初登場する。セイラムによって、知識のレリックの使い方を知る者を連れてくることを命じられる。Volume 8における主要な敵である。
“Dark”において、銀の眼を持つファウナスを核にしていることが明らかとなる。シュニー邸でペニー・ポレンディーナを追い詰める際に殺される。
外見[]
ザ・ハウンドは大型のグリムで、短く広い鼻を持ち、その歯は顎の上に重なっている。このグリムには目がなく、犬歯のような耳と露出した翮状の脊柱があり、特に耳の1つは切り落とされたような状態になっているのが特徴である。タールのような体をしており、顔にある口と体からしばしばグリムの液体を垂らしている。
ザ・ハウンドの口は2つあり、主となる第1の顎は顔に、第2の顎は首の後ろにある[4]。
"Refuge"の様々なシーンに登場し、その姿は大きなイヌのようで、獲物を追いかける際は忍び寄る。攻撃時には狼男のような人型に変身し、その脚は二足歩行できるように骨格ごと変化する。
最終的には声帯を使うようになり、背中に赤いコウモリのような翼を生やしてガーゴイルのような姿に変身した。また手足も伸び、背中から3本目の腕が生えた。
ルビー・ローズが銀の眼の力をザ・ハウンドに向けて使ったときに、グリムの核となる存在が現れた。顕わになった核は、色白で犬耳と銀の眼をもつファウナスの男であった。彼の顔にはひどい傷跡があり、表皮の一部が剥がれ、火傷のようにただれていた。右目は葉脈のように広がる白い肉で覆われており、それは薄くなって右目から顔中に伸びている。白い腫が皮膚のあちこちにあり、また一部の皮膚が剥がれて筋肉が露出しているので、腐敗しているように見える。残っている左目と左耳からは黒い液体が漏れている。グリムとしての肉体の下にある男の腕は黒ずんだり骨となったりしているため、彼自身の肉体は退縮してしまったようである。
人物[]
他のグリム同様、ザ・ハウンドはセイラムに忠実で、彼女の命令には疑いなく従った。しかし大多数のグリムとは異なり、ザ・ハウンドは本物の人間のような知性と狡猾さを見せた初めてのグリムである。このことは"Refuge"においてヤン・シャオロンやジョーン・アーク、ライ・レンがザ・ハウンドを攻撃したり、銃器を使用したりすることを防ぐために、オスカーを盾にするほど狡賢かった点からも見て取れる。また彼女らと対峙するより先にまずは一行を観察して、できるだけ多くの弱点を見つける狡猾さや忍耐強さ、ステルス性を発揮している。その結果、オスカーを誘拐ための必要な情報を得ることができた。さらに誘拐した際にザ・ハウンドは自制心を発揮し、オスカーに大きな怪我をさせることなく、彼のオーラを破壊した。
その後の"Fault"では、オスカーをモンストラに連れ去る際にも戦術的・分析的能力を十全に発揮し、追っ手を撃退している時間はないと判断し、代わりに応援を呼んだ。
ザ・ハウンドはファウナスを核としているためか、話しかけられた時に返答する能力を示した。"Refuge"でレンが「オスカーを返せ」と要求したのに対して、ザ・ハウンドは「コトワル("No.")」という言葉を発したことにより、人間の言葉を理解していることがわかる。
ザ・ハウンドは、忠実なペットのような性格をしているようである。"Fault"ではセイラムの後をついて回り、撫でられるのを楽しみにしており、またセイラムの感情に反応しているようで、"Midnight"でシンダー・フォールが冬の乙女に関して出過ぎた真似をした時には唸りながらシンダーに飛びかかって威嚇した。
"Dark"においては、シュニー邸でペニーを捜している時に加虐性を発揮し、ウィットリー・シュニーを脅すためだけに部屋に侵入した後も彼を探す素振りをした。ルビーの銀の瞳の力を受けて、核であるファウナスの顔が露わになった時には苦悶の表情を浮かべ、さらに目的への一途な怒りを表し、ペニーに向かって「ムスメ、サラウ!("Take the girl!")」とだけ繰り返した。ファウナスである彼の顔がグリムの肉体に飲み込まれると、認知的な思考や徴候は消えてしまった。
技能と力量[]
ザ・ハウンドの主な能力は、必要な環境に応じて自分の体を適合させることである。手足を組み替えたり、コウモリのような翼を生やしたり、四肢を大きく伸ばしたり、さらに腕をもう一本生やしたりすることなどができる。また、すぐれた嗅覚を持つ有能な追跡者でもあった。
特にザ・ハウンドはグリムとしては非常に頭が良く、ハンターチームに対して気絶したオスカーを人質として使い、人の言葉で「コトワル」と告げてジョーンを唖然とさせた。このグリムは他のグリムすら怯えさせるようで、近くにいたことがばれたセイバーたちはすぐに退散した。またザ・ハウンドは非常に高いステルス性を持っており、ヤン一行を長時間にわたって尾行したが気づかれなかった。さらに、必要に応じての他のグリムを呼び出すことができる。
ザ・ハウンドには目がないため視覚がなく、聴覚と嗅覚に頼らざるを得なくなった[5]。
ザ・ハウンドの肉体は液体のような状態であるため、非常に耐久性が高く、打撃を容易に受け流すことができる。肉体に穴が開くのではなく、常に変化する体表面で衝撃を受けることでその衝撃も吸収してしまい、どんな傷でもすぐに再生することができる。さらに重要なことは、ザ・ハウンドの肉体は銀の眼の力を受けても再生できることである。しかし、それでも大きなダメージを受けて核であるファウナスが一瞬露出し、また再生後もそれ以前のように速く動けず、弱体化してしまった。
かつてこのグリムの核であるファウナスは銀の眼の戦士であったようだが、セイラムの実験後も彼が自らの能力を自覚していたのか、あるいは全く使えなかったのかは不明である。
歴史[]
ある時、セイラムはファウナスの銀の眼の戦士で実験を行い、ザ・ハウンドと呼ばれるグリムのハイブリッドを創り出した。
オスカーの捕獲[]
知識のレリックを手に入れたセイラムはザ・ハウンドを召喚し、その起動方法を知っている人物を連れてくるように命じた。ザ・ハウンドはマントルでオスカーをはじめ、ヤンやジョーン、レンを追跡し、その後オスカーを尾行、待ち伏せして気絶させる。
それに気づいたヤンたち3人はザ・ハウンドを攻撃するが、オスカーを人質として使用したグリムとは思えないザ・ハウンドの知性と話す能力に衝撃を受け、そして恐怖を感じた。その隙にザ・ハウンドはオスカーを抱えて飛び去った。ヤンとジョーン、レンはホバーバイクを使ってそれを追跡した。3人はザ・ハウンドの後を追って雪原にある渓谷に入るが、ザ・ハウンドは3人を足止めをするために、増援として多くのグリムを召喚し、先へと進んだ。レンが一度しがみついたのだが、崖から落ちたヤンとジョーンを救うためにザ・ハウンドから手を放すことになった。
追手を振り切ったザ・ハウンドはオスカーをモンストラへと連れて行く。その後セイラムがオスカーを拷問をしている間、拷問役がヘイゼル・ライナートに代わるまでずっと、ザ・ハウンドはオスカーのコートの襟首を咥えて持ち上げ続けた。
シンダーとニオポリタンは、セイラムの後ろについてモンストラの廊下を歩いていたザ・ハウンドに遭遇する。シンダーがザ・ハウンドの存在をセイラムに尋ねると、セイラムは実験体だと答えた。シンダーがセイラムに再び話しかけようとするとザ・ハウンドは唸り、セイラムとザ・ハウンドはシンダーとニオを残して去っていった。
ペニーの追跡[]
セイラムがモンストラのブリッジに部下を呼び寄せた時、ザ・ハウンドはシンダーとニオ、エメラルド・サストライの匂いを嗅いだ。セイラムはシンダーに、ペニーを探し出すことをザ・ハウンドと競わせた。ペニー追跡の助言者として、まずアーサー・ワッツをアトラス軍の収容所から助け出すことを命じた。どちらが先にペニーを見つけ出しても、シンダーが冬の乙女の力を手にすることを許すことにした。その後シンダーに睨まれるが、ザ・ハウンドはそのままセイラムのアトラスへの侵攻に立ち会う。
ザ・ハウンドはペニーの「血」の匂いを嗅ぎつけて、すぐにシュニー邸にたどり着いた。庭園の自家発電施設でルビーとブレイク・ベラドンナを見つけると、ザ・ハウンドはペニーの匂いがついていたルビーを攻撃した。しかしルビーが目的の人物ではないこと、そして「ムスメをサラウ("Take the girl.")」義務があることを悟ったハウンドは戦いを放棄し、邸宅を襲撃する。
監視カメラでザ・ハウンドを見ていたウィロウ・シュニーは、ワイス・シュニーにザ・ハウンドの奇襲を警告した。その後、マントル市民の避難手段を確保しようとしていたウィットリーにザ・ハウンドが迫っていることに気づくと、ウィロウはウィットリーのいる部屋まで駆けつけた。そしてグリフでボーバタスクを召喚して、一時的にザ・ハウンドを足止めすることに成功した。廊下に逃げ出したウィロウとウィットリーをザ・ハウンドはすぐに追いかけたが、ワイスのグリフによって作り出された氷の壁によって阻止される。
ザ・ハウンドが邸宅の入り口まで戻ると、ハッキングされたペニーと遭遇する。ペニーを捕らえたザ・ハウンドはシュニー邸を飛び去ろうとしたが、ルビーの使った銀の眼の力を受けたことでペニーを手放し、窓の外に落ちていった。
しかしザ・ハウンドはルビーの攻撃から生き延び、外壁をよじ登り窓から再び邸内へ侵入した。その頭部は銀の眼の力の影響を受けて、その核である大きな傷をもつ銀の眼のファウナスが明らかとなり、ルビーたちは恐怖を感じた。ザ・ハウンドはルビーの攻撃から次第に回復していき、ペニーやルビー、ブレイク、ワイスに飛びかかろうとしたが、ウィットリーとウィロウによって押し倒された、宅内の飾られていたアーマー・ガイガスの巨大な金属製の像に潰されて死亡する。
グリムが消滅すると、核となった人物の骨らしきものだけが残った。
トリビア[]
暗喩[]
- ザ・ハウンドは童話「赤ずきん("Little Red Riding Hood")」に登場する大きな狼を暗示しているようである。
- ザ・ハウンドは狼に似た、犬と人狼(ライカンスコープ・lycanthrope)の姿を持つ。
- 赤ずきんを襲う狼のように、ペニーをザ・ハウンドは襲った。
- 皮肉なことにシュニー邸でペニーを追跡している時に、赤ずきんを連想させるルビーをさらいかけた。
- ザ・ハウンドは人を核としている。このことは狼が赤ずきんのおばあさんを食べたことを示しているかもしれない。
- ザ・ハウンドはイギリスの民間伝承にある「黒犬("black dog")」も暗示しているようである。
- ザ・ハウンドは黒い犬である。
- いくつかの場合、黒犬は姿を変えると言われている。 ザ・ハウンドは姿を変え、翼を広げ、背中から新たな腕を生やす能力を持っていた。
- イギリスや北欧諸国の民話において、黒犬は教会を守る精霊("Church Grim")と呼ばれている。
- ザ・ハウンドの核であるファウナスが狐か犬のファウナスに見えるのは、Daniel P. Mannixが1967年に書いた「狐と猟犬("The Fox and the Hound")」を暗示しているかもしれない。このことはフォックス・アリステアと彼の叔父であるコッパーも同様である。
特徴と設定[]
- Kerry ShawcrossもKiersi Burkhartも、ザ・ハウンドの登場シーンをどちらが書いたか覚えていなかったので、KerryはクレジットをKiersiにした[6]。
- ザ・ハウンドの声はChris Kokkinosが企画した[7]。
- Volume 8 Openingでザ・ハウンドの翼は、セイラムの翼として描かれている。
- ザ・ハウンドは、グレート・デーンやグレイハウンドなどのいくつかの犬種を参考にデザインされた[8]。
- ザ・ハウンドを発見して逃げるセイバーの姿は、"Halo: Combat Evolved"でコヴナントが初めて何かから逃げる姿を見せたシーンがMiles Lunaの印象に残っており、そこから着想を得た[9]。
- Volume 8 のディレクターズコメンタリーで、MilesとKerryは、ザ・ハウンドがオスカーを襲うシーンの残虐性を賞賛している。[Paula Decanini]]はシニア・アニメーターのMegan Pellinoがこのシーンを担当したとクレジットした[10]。
- Milesはザ・ハウンドの首の棘の可動性を賞賛し、シュニー邸のバルコニーをよじ登る様子を「ゼノモーフ・アクション」と表現している[11]。
本編[]
- ザ・ハウンドはシリーズ中で、初めて言葉を発する正式なグリムである。
- ザ・ハウンドが登場する前に、人間の言葉を話すことができる他の3体のグリムがスピンオフ作品のRWBY Chibiに登場している。フロイドというガイストとマイクとマーティという双子のベオウルフである。
- ザ・ハウンドの場合、銀の眼をもつファウナスが核となっているからだと考えられる。
- "Fault"でセイラムは、ザ・ハウンドは実験体であると言っており、試作品である可能性が示されている。
- グリムの振る舞いを熟知している者にとっては、「常に100%攻撃的である」のではなく、ザ・ハウンドのように廊下をゆっくりと忍び歩きし、不審げに右往左往するグリムを見ると深く動揺してしまう[12]。
- ザ・ハウンドがより知的な行動をとるようになったことや、暴力を常に優先するわけではなかったことは、ザ・ハウンドが単なるグリムではないことを示唆している[13]。
- ザ・ハウンドの核となった人物は、本編で初めて登場した銀の眼のファウナスである。
- ザ・ハウンドは本編中で唯一、殺された後に死骸を残したグリムである。
- ブラックマーケットで売られ、触れた動物をハイブリッド化しながら「グリム化」できるというグリムの液体のコンセプトが立ち消えたことで、ザ・ハウンドの創造が着想されたのかもしれない。
参考文献・脚注[]
- ↑ Based on Concept Art
- ↑ Based on Concept Art
- ↑ Refuge
- ↑ Larissa Angus' Twitter
- ↑ Larissa Angus' Twitter
- ↑ RWBY Volume 8 Directors' and Writers' Commentary Chapter 1
- ↑ Chris' Twitter
- ↑ Larissa Angus' Twitter
- ↑ RWBY Volume 8 Directors' and Writers' Commentary Chapter 2
- ↑ RWBY Volume 8 Directors' and Writers' Commentary Chapter 2
- ↑ RWBY Volume 8 Directors' and Writers' Commentary Chapter 8
- ↑ RWBY Volume 8 Directors' and Writers' Commentary Chapter 8
- ↑ RWBY Volume 8 Directors' and Writers' Commentary Chapter 8